胸を張るほど苦しくなる?〜産後ママに多い“頑張りすぎ姿勢”と呼吸の関係〜
- 荻 菜摘

- 12月11日
- 読了時間: 4分
①胸を張る姿勢の落とし穴
姿勢を良くしようとするとき、
多くの方がまず “胸を張る” ことで姿勢を整えようとします。
しかし
胸を張るほど胸郭(胸まわり)が固まり、呼吸が浅くなる
という悪循環を辿っているケースが少なくありません。
しかも
ご本人は、“胸を張っているつもりはない” と感じている場合も。
・肩がガチガチにこわばる
・呼吸が浅く、胸のあたりが苦しい
・姿勢を整えようとすると逆に疲れてしまう
といったお悩みに当てはまる方はぜひ最後までご覧ください。
② 産後の身体で起きていること
産後は見た目以上に、身体の構造そのものが変化しています。
ポイントは ひとつずつの変化ではなく、連鎖して起きていること。
特に大きいのは次の4つの連鎖です。
1. 肋骨(胸郭)が前上方に開きやすい
→妊娠中に臓器や赤ちゃんを支えていた影響で、肋骨は前に固定されやすくなります。
2. 横隔膜がうまく働きにくい
→胸郭位置の変化と腹圧の低下により、呼吸の受動力が動きづらい状態に。
3. 体幹の支えが弱まりやすい
→腹圧が安定しないため、深層筋同士の連動が起きにくくなります。
4. 反り腰・前重心がクセとして残りやすい
→妊娠後期の重心変化を身体が記憶し、産後も続いてしまう傾向にあります。
この“妊娠期の変化が残ったまま”胸を張ろうとすると、
胸郭がさらに固まる
→ 呼吸が狭くなる
→ 体幹が働きにくい
→ 上半身が疲れる・腰が反る
という“苦しさのループ”が起きやすくなります。
つまり、
産後は胸を張るほど姿勢が崩れやすい構造
になっているのです。
③ 海外研究が示す「胸郭の硬さ」と姿勢安定性の関係
最近の身体科学では、
姿勢は“形”ではなく“呼吸の通り道”で安定する
ことが明らかになってきています。
特に参考になるのが次の研究です。
📚Kocjanらの研究(2018)|横隔膜の動きと姿勢安定性
横隔膜の可動性が、体幹の安定にどの程度影響するのかを調べた研究。
横隔膜がよく動く人は、体幹も安定しやすい
胸郭が硬いほど、横隔膜も深層筋も働きにくい
この研究からは
胸を張って胸郭を固めるほど、呼吸が浅くなり、結果として姿勢の安定性が低下する
という、「胸郭をどう保つか」ということの本質を垣間見ることができます。
産後の身体はそもそも胸郭が動きにくい状態。
そこへ “胸を張る努力” が重なると、
呼吸もインナーも働かなくなる のは当然の流れなのです。
④ 姿勢づくりの鍵は「胸郭が動ける余白」を取り戻すこと
研究の知見と、現場で多くのママを見てきた実感を重ねると、産後にまず必要なのは「胸を張る」ではなく、
胸郭が自然に動ける“余白”をつくること。
そのためのポイントは3つ。
1. 背中側にも呼吸が流れること
→胸郭が前だけでなく“後ろにも”ふくらむと、横隔膜が働きやすくなります。
(※胸郭は左右に大きく広がりすぎないようにすることをMTCAでは推奨)
2. みぞおちを固めすぎないこと
→みぞおちを引きすぎると、胸郭の動きが止まり、呼吸が浅くなります。
“やわらかいみぞおち”は産後の安定のカギ。
3. 横隔膜が上下しやすい環境をつくること
→横隔膜が動くほど、体幹の深層筋は自然に働きやすくなります。
※息を止める・力みで止まる動きは避ける
この3つが揃うと、
姿勢は“努力するもの”から“勝手に整うもの”へ変わり始めます。
⑤ まとめ:胸を張らず、呼吸が通る身体へ
産後の身体は、胸を張ることで整うとは限りません。
むしろ、胸郭が動きやすい環境が生まれたとき、
姿勢も呼吸も動きも自然と安定していきます。
これは、
産後のママとしての私の実感でもあり、
MTCAトレーナーとしての確信でもあります。
胸を張らない——
たったそれだけでも、肩がゆるみ、背中に呼吸が入り、
“今日1日を過ごす身体”の心地よさが大きく変わります。
MTCAの特徴は、形ではなく
「呼吸が通る構造」に身体を再教育すること。
だからこそ、妊娠中でも産後でも、
無理なく、その人の生活に馴染むのです。
がんばる姿勢づくりから、
“整う姿勢づくり”へ。
小さな一歩から、身体は必ず変わっていきます。
その変化を、一緒に育てていけたら嬉しいです。
⚫筆者:荻菜摘
大手企業にて営業職からキャリアをスタート。Webディレクター・マーケターとして9年目。
Webマーケティング戦略や新規事業に携わる一方で、現在はピラティス(PHI)インストラクターとしても活動。
20〜40代女性を中心に、解剖学に基づいたケアとボディメイクを提供。
MTCAトレーナー資格を取得後、第一子を出産、現在は産後ママとして自身の経験も交えたリアルな情報発信を行っている。











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